低学年向け百人一首、5色に分け20枚ずつ対戦

 百人一首のかるたを青や黄など5色20枚ずつに分けて遊ぶ五色百人一首が、全国の小学校に広がっている。

 枚数が少ないため、対戦が5分ほどで済むことから、低学年でも楽しむことができる。子供たちに日本の伝統文化への関心を持たせようと、かるたの普及を助成する動きも出てきた。





 「あしびきの??」「ハイッ!」。大阪府和泉市の市立黒鳥小学校を訪ねると、2年生の教室から、札を取り合う子供たちの元気な声が聞こえてきた。札を取る速さは大人顔負け。「おもしろい」「休みの日におばあちゃんと勝負する」と子供たちには好評だ。中には、100首の大半を暗記した子もいる。

 「集中力がつき、みんな仲良しになりました」。そう喜ぶのは、担任教諭の寺田真紀子さん(32)。寺田さんが五色百人一首を知ったのは別の小学校に勤務していた8年前。子供たちが夢中になる姿を覚えていて、黒鳥小で本格的に取り入れようと思いたった。

 3年前からは、土曜日に五色百人一首を楽しむ教室も開講。地区内の小学生らに呼びかけ、現在は4小学校から約100人が集まり、交流戦を行っている。

 五色百人一首は1988年、手軽に伝統文化の和歌に親しめるようにと、東京の小学校校長が考案。通常の百人一首かるたを、ピンク、オレンジ、緑、黄、青に色分けし、1回に使うのは同じ色の20枚だけ。通常のかるたと違って、取り札の裏には上の句が印刷されており、対戦直前まで暗記ができる。

 広域ネットワークを持つ教育団体が普及に努め、東京教育技術研究所が教材として販売している。「遊び感覚で和歌を覚えられる」と好評で、昨年は過去最高の10万8604セットが売れた。これまでに計約200万人の子供が利用し、今ではほとんどの都道府県で大会が開かれている。

 最近は、地域活動でも取り入れられている。9月から導入した京都市山科区の大宅児童館では、子供たちが毎日のようにかるたで遊んでいる。館長の山手重信さん(60)は「人と人が向き合って遊ぶことで、テレビゲームとは違う遊びのきずなが生まれているようです」と言う。

 かるた普及を支援する動きも起きている。伝統文化の理解に役立つと、財団法人「伝統文化活性化国民協会」(東京)は3年前から活動団体に補助金を出し、今年は大阪、兵庫、栃木など8府県の8団体が対象になった。

 小学生も応募できる現代学生百人一首を主催する東洋大の神田重幸教授(近代短歌史)は「ここ数年、日本の伝統文化が注目されている。その中で、百人一首を音読した際のいにしえの言葉の響きが、子供たちに新鮮に受け止められており、五色百人一首の人気にもつながっている」と話している。(田中洋史)

(2006年10月31日 読売新聞)