次回入荷の「情報なし」、機会損失の恐れも

 11月10日の夕方、千代田区神田の大手量販店「ヨドバシカメラマルチメディアAkiba」付近に人だかりができ始めた。翌11日に発売されるソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の新型ゲーム機「プレイステーション3(PS3)」をいち早く手に入れようとする人たちの集まりだ。人だかりの数は、午後10時の閉店を前に800人以上に膨れ上がった。
 午前2時過ぎに再び同店を訪れると、人だかりは消えて辺りは静まり返っていた。見回りをしていた警備員に聞くと、集まった人を午後11時頃に同店の地下駐車場に誘導したという。地下駐車場では、1000人以上の老若男女が整然と行列をなしていた。

 行列の中には転売目的とおぼしきアジア系外国人などの姿も目立ち、ある種異様な雰囲気に包まれていたが、午前6時過ぎに整理券が配布されてからは、大きな混乱もなく午前7時の販売開始時間を迎えた。行列は最終的に「1850人に達した」(同店の販売員)という。販売開始イベントには、SCEの久夛良木健社長兼CEO(最高経営責任者)や丸山茂雄取締役も駆けつけてPS3を購入者に手渡した。

 10日夜から11日朝にかけて、こうしたPS3を求める長蛇の列が全国各地でできた。争奪戦がここまで過熱したのは、発売日の出荷台数が極端に少なかったからだ。「8万台程度だったようだ」(ゲーム専門店を中心に構成する業界団体「日本テレビゲーム商業組合」の新谷雄二理事長)。

 SCEは当初、400万台のPS3を年末商戦に投入する計画だったが、PS3に搭載する次世代DVD「ブルーレイディスク(BD)」ドライブの基幹部品の生産の遅れなどにより出荷台数は200万台に半減。うち国内出荷は100万台程度の見通しとなった。都内のある量販店の店員は「(SCEからは)発売日以降の入荷情報がまだ届いていない」とため息をつく

日経ビジネス オンライン - 2006/11/20