希少種守れ絵筆に力/移住の画家 図鑑製作


【国頭】「絵を通じてヤンバルクイナなど貴重な生き物を守る大切さを分かりやすく伝えたい」?。やんばるの自然に魅せられ国頭村安田に移り住んだ画家の菊田一朗さん(45)=福島県出身=がNPO法人「どうぶつたちの病院」(長嶺隆事務局長)と協力し、本島北部に生息する希少な生き物を豊富な絵で紹介する「やんばる図鑑ノート」の製作を進めている。冬休み前の完成を目指し「国頭、東、大宜味の3村の小学生に無償で配布したい」と話している。(知念清張)
 菊田さんが、初めて沖縄を訪ねたのは一九八四年。「発見」されたヤンバルクイナを「一目見るため」だった。昨年五月、沖縄野鳥の会などの呼び掛けで来県。絵を描くため歩いたやんばるの森と多様な生き物に感動し今年三月、家族五人で移り住んだ。

 図鑑ノート製作の計画は同病院の獣医師らが本島北部の希少生物の生息調査にかかわった際、「恵まれた環境にありながら、地域のほとんどの子供たちが生き物について知らないことにショックを受けた」ことがきっかけとなった。

 ヤンバルクイナ以外にもノグチゲラや、ホントウアカヒゲ、リュウキュウヤマガメなど約五十点の希少生物を生き生きとしたタッチで描いた。

 「普段持ち歩きやすいように」とサイズはA5判、四十八ページ。子供たち自身が、観察の状況や生き物の絵を書き込む欄も設けた。千部発行し、三村の小学生以外の希望者には実費で販売することも検討する。製作には民間企業からの寄付金も役立てられる。

 菊田さんは北海道や北陸地方などで、白鳥やツルなど広く自然を題材に描いてきた版画画家。車にひかれるなどして負傷したヤンバルクイナを手当てする「救急救命センター」でクイナに朝と夕、餌をやることも日課だ。

 「テレビゲームの強烈なメッセージ以外にも、絵を描くことで子供たちに自然の大切さ、人間の手作りの良さを知ってほしい」と話す菊田さん。図鑑ノートが活用されることを願っている。

【写真】「やんばる図鑑ノート」に希少生物を描いた菊田さん=同村のアトリエ

沖縄タイムス - 2006年12月11日