テレビゲームは新領域を開拓へ

 今年もいろいろあったが、テレビの世界を取り巻く状況も日を追うごとに厳しさを増している。そんな2006年に顕在化したテレビ包囲網である新型ゲーム機、HDDレコーダー、YouTubeの3つを取り上げ今年を振り返りたい。=江口靖二

 今年は3社の次世代ゲーム機が出揃った。ゲーム機を購入するときには大人も子供もそこから得られる、あるいは得られるであろう付加価値に期待する。その付加価値とは「楽しい」ということだ。任天堂のWiiは楽しそうなモノを提供してくれそうな玉手箱に見え、ソニー・コンピュータエンタテインメントの「プレイステーション3(PS3)」はハイビジョンと同じで、綺麗だがそれだけしか伝わってこない道具箱のようだ。確かに表現される映像には目を見張るものがあるのだが、巨大なハードディスクの意味もこれまでのメモリーカードと何がどう違うのか、消費者、少なくとも私には伝わってこない。

 どうやら私はPS3の狙うターゲットと違うようである。これまでのテレビゲームは8ビットPC時代からそれなりにやってはいるが、さほど入り込めなかった。ゲーム市場全体としてはより高画質、高精細なハイテク系と、任天堂の「Wii」や「ニンテンドーDS」のような玩具系に分かれる方向だ。前者はPCゲームに近く、後者はよりテレビ的である。実際にWiiの機能の一つは「Wiiチャンネル」とまでネーミングされていて、リビングルームの主役の座を巡るディスプレー争奪戦が物理的な画面だけでなくコンテンツにまで波及してくるものと思われる。

 テレビにとってゲーム機は悪い話ばかりでもない。これまでのじっと静止したゲーム機の操作スタイルでは極端な大画面はかえって逆効果になることもあった。ところがWiiで身体を使ったゲームをやってみると、これまで以上に大画面テレビが欲しくなる。リモコンを大きく(飛ばさない程度に?)動かすためには広いスペースが必要で、そのためには画面から少し離れる必要があり視認性も悪くなる。また実際の身体の移動と画面上の移動距離のバランスの点でもある程度の画面サイズがあったほうがいい。最低32インチくらいは欲しいところだろう。Wiiにはまった家庭では地上デジタル放送よりも大画面テレビの購入の原動力になるに違いない。

日本経済新聞 - 2006年12月20日